特定行政書士制度について考えてみます

(1)特定行政書士に行政不服申立手続代理業務を与えることに反対した弁護士会

行政書士法改正により、弁護士会としては、今まで独占業務だった行政庁に対する不服申立事件が一部とはいえ特定行政書士に認めることに文句を言いたくなる気持ちもわからないわけではありません。

特定行政書士は、弁護士会等が行政書士に行政不服申立手続代理業務を与えることに反対していた(現在も反対でしょうけど…)けれども制度化されました。反対意見として一部記すと、九州弁護士会連合会は2014(平成26)年6月13日に、金沢弁護士会は 2014年(平成26年)3月4日に、愛知県弁護士会は2014年(平成26年)2月20日に、行政書士法改正に反対する声明を出しています。主な反対理由を以下のとおりです。
①行政書士資格には行政不服申立てを代理する知識、能力が要求されていないので、行政書士には行政不服申立てを代理する能力がない。
②行政書士の監督や懲戒は、都道府県知事が行うが、そのような行政書士が行政不服申立てにおいて、果たして都道府県知事と対立関係に立って国民の権利利益の救済を図ることができるのか、疑問がある。
③行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げるなど,弁護士は既に行政手続業務にも代理人として相当関与しているところ,行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性がない。
簡単に解釈すると、行政書士には「不服申立てを代理する能力がないし」「監督官庁と対立して仕返しされると困るのでしょうし」「弁護士が既に社会的弱者を救済する実績を上げているので行政書士の出る幕はない」等の理由で反対されていました。
特定行政書士となって行政不服申立手続代理業務を行う者は、こうした批判が当てはまらないように業務をしていかなければならないと考えます。

(2)平成 26年12月27日に改正行政書士法施行されたけど平成 27年 12 月 3日まで一人もいなかった特定行政書士

平成26年12月27日施行の改正行政書士法により、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること」が、「日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士に限り、行うことができる」とのこととなりました。

日行連は、平成27年5月から特定行政書士法定研修申込を受付を開始し、研修考査を10月4日に実施、12月4日に受験者に考査結果を発送し研修終了日としました。同日、考査合格者が研修の過程を修了した行政書士となり、行政不服申立手続代理業務ができる特定行政書士が誕生しました。

「日行連が行う研修修了した行政書士は、行政不服申立手続代理業務してもいいよ」となった平成26年12月27日から約1年になる少し前の平成 27年 12 月4日に「やっとこさ」2,428名の行政不服申立手続代理業務ができる行政書士が誕生したことになります。

日行連としては、初めての試みで手さぐりで特定行政書士法定研修を実施したこともあり、予定通り事が運ばなかったこともあったと思います。来年以降は、もっと充実した質の高い法定研修になると思います。そして、考査問題もレベルアップするかもです。

(3)特定行政書士ができる業務の根拠条文

特定行政書士の根拠条文、行政書士法 第一条の三第1項第2号は次のように定めています。

前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。

行政書士業務の他の条文同様、ひねりが加えられたバックドロップ条文となっています。

弁護士会等が反対したおかげで、日行連としては「行政書士が作成することができる官公署に提出する書類」としたかったところが、「行政書士が作成した官公署に提出する書類」となったそうです。自分か他の行政書士が依頼を受けて作成した申請書類の許認可等が拒否された場合に不服申立て手続きの代理ができる規定となっています。本人が申請した許認可等が拒否された場合、特定行政書士は不服申立ての代理が出来ない規定になっています。あららと思っていたところ、東京の戸口勤先生が書いた「行政不服申立てと改正行政書士法解説」を読むと、「本人申請が拒否されて相談を受けた際、拒否された理由と依頼人の意向を確認して、再申請をすればよい。行政書士が代理人として再申請をして、それでも拒否されたら特定行政書士として不服申立てを代理すればよい」との趣旨が書いてありました。なるほどなと思いました。まずは、行政書士として依頼人の許可取得に力を尽くし、違法・不当な拒否処分を受けた場合に特定行政書士として力を尽くしなさいとのことだと理解しました。

(4)特定行政書士として業務受託できそうなパターン

ア)他の行政書士に依頼したが不許可処分になった場合

自分が依頼を受けて申請したが不許可処分になった場合には、依頼人から信用されなくなると思うので、その依頼人から不服申立てを受託することは難しいと思います。ということは、他の行政書士にも言えることだと思うので、他の行政書士に依頼したが不許可処分を受けてしまった依頼人が相談に来て、審査請求の受託をできるかもしれません。

イ)本人申請したが申請を受理されない場合

本人申請をしようとしているが、役所が何のかんのと申請を受理せず、相談に来られた場合には、要件等を確認して行政書士が申請する。役所が送り返してきた場合や審査せず放置した場合には、不作為の審査請求を受託できるかもしれません。

上記、2つのパターンの業務受託が考えられますが、改正行政不服審査法と各個別法をよくよく調べて不服申立手続代理をしていかなければなりません。

(5)まとめ

まとまりのない話になってしまいましたが、新設された特定行政書士制度が利用価値のある制度になるには、特定行政書士の仕事の質に掛かっています。自分自身腕を磨いていかなければならいと感じています。

役所に許認可等の申請をしたが不許可処分を受けた場合や本人申請が受理されなくてお困りの際には、特定行政書士にご相談ください。(あっ)行政書士おち事務所にご相談下さいね!

おわり

~お知らせ~
平成 27年 12 月4日 私は、特定行政書士法定研修考査に合格しました。2,428名誕生した特定行政書士の初期メンに加わることができました。どうぞよろしくお願いします。