新行政不服審査法第9条第3項を解説


■新行政不服審査法第9条第3項

 

(審理員)
第九条

3  審査庁が第一項各号に掲げる機関である場合又は同項ただし書の特別の定めがある場合においては、別表第一の上欄に掲げる規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとし、第十七条、第四十条、第四十二条及び第五十条第二項の規定は、適用しない。

新行政不服審査法9条は、新設された重要登場人物である審理員についての規定と、例外として審査庁が審理員を指名しなくてよい場合とその場合の審査請求手続きについて定めている。
新行審法9条3項で、国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会 や地方自治法第百三十八条の四第三項に規定する機関 などが審査庁である場合、審理員による審理手続きをせず、審査庁が審理手続きを行うので、その諸規定をまとめた。新行政不服審査法第9条第3項を解説してみようと思います。新行審法の条文を片手に読んでいただければ幸いです。

■新行審法9条1項各号に掲げる機関

(審理員)9条1項各号

 内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項又は国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会
 内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条又は国家行政組織法第八条に規定する機関
 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第一項に規定する委員会若しくは委員又は同条第三項に規定する機関

新行審法9条1項各号に掲げる機関は、政治的中立性や専門的技術性を確保して調停、審査、諮問又は調査のため、優れた識見を有する委員で構成された合議制の機関である。これらの機関が審査庁である場合は、審査請求の審理及び判断が、公正かつ慎重になされることが制度上担保されていると考えられるから、審理員による審理手続の適用が除外されている。
不服申立て審査を行う機関として、健康保険、船員保険、厚生年金保険及び国民年金の給付等処分に関して審査請求・再審査請求を審理する社会保険審査会や、要介護認定の結果に納得できない場合、審査請求の審理をする各都道府県に設置の介護保険審査会などがある。

■新行審法9条3項別表第一の読み替え(別表第一の上欄に掲げる規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるもの)

条文中、下線部分が読み替え。余計な括弧書きは省略しているところがあります。

(11条2項読み替え後)
共同審査請求人が総代を互選しない場合において、必要があると認めるときは、審査庁は、総代の互選を命ずることができる。

※審理員がする総代の互選命令を審査庁がすることの規定


(13条1項と2項読み替え後)
1 利害関係人は、審査庁の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。
2  審査庁は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができる。

※審理員が、利害関係人の参加を許可したり、利害関係人に参加を求めることができる規定を審査庁がすることとした。


(25条7項読み替え後)
執行停止の申立てがあったときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。

※審理員がいないので、審理員が執行停止をすべき旨の意見書を出すことはないので、削除している。


(28条読み替え後)
審査請求人、参加人及び処分庁等(以下「審理関係人」という。)並びに審査庁は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない。

※審査庁も審理員と同様、審理関係人と協力して審理手続きの計画的進行をする義務がある。


(29条1項と2項と5項読み替え後)
1 審査庁は、審査請求がされたときは、第24条の規定により当該審査請求を却下する場合を除き、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書の写しを処分庁等に送付しなければならない。ただし、処分庁等が審査庁である場合には、この限りでない。
2  審査庁は、審査庁が処分庁等以外である場合にあっては、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求め、審査庁が処分庁等である場合にあっては、相当の期間内に、弁明書を作成するものとする。
5  審査庁は、第二項の規定により処分庁等から弁明書の提出があったとき、又は弁明書を作成したときは、これを審査請求人及び参加人に送付しなければならない。

※1項で、審理員が、処分庁・不作為庁に弁明書の提出を求めるため、審査請求書等の写しを直ちに処分庁・不作為庁に送付しなければならない規定が、審査庁が、合議制の機関であるため、時間をとって速やかにとした
2項と5項で、審査請求人・参加人に弁明書を送付しなければならないので、審査庁が処分庁等であっても弁明書を作成することとした。


(30条1項と2項と3項読み替え後)
1 審査請求人は、前条第五項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(以下「反論書」という。)を提出することができる。この場合において、審査庁が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
2  参加人は、審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(以下「意見書」という。)を提出することができる。この場合において、審査庁が、意見書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
3  審査庁は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等(処分庁等が審査庁である場合にあっては、参加人)に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人及び処分庁等(処分庁等が審査庁である場合にあっては、審査請求人)に、それぞれ送付しなければならない。

※1項・2項で、審査請求人は反論書を審査庁に、参加人は意見書を審査庁に提出できることとされた。間違って審理員に提出しようとしてはいけません。審理員は、いません。審査庁が、提出期間を定めた時は、その期間内に提出しなければなりません。
3項で、 処分庁等が審査庁である場合、審査庁は、自分とこに反論書・意見書を送付しなくていいとされた。


(31条1項から5項読み替え後)
1 審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審査庁は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
2  前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審査庁が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人(処分庁等が審査庁である場合にあっては、審査請求人及び参加人。以下この節及び第五十条第一項第三項におい同じ。)を招集してさせるものとする。
3  口頭意見陳述において、申立人は、審査庁の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
4  口頭意見陳述において、審査庁は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
5  口頭意見陳述に際し、申立人は、審査庁の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。

※審理員が中心に行う口頭意見陳述の規定を審査庁中心に行うための読み替え。

2項括弧書きで、処分庁等が審査庁である場合、処分庁は、招集しなくていいと定められている。また、新行審法9条4項で、「新行審法9条1項各号に掲げる機関」や「条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合」の審査庁は、必要があると認めるときは、その職員に口頭意見陳述を聴かせることができるとされている。と言うことは、処分庁等が審査庁である場合には、口頭意見陳述の場には、審査庁の職員と審査請求人と参加人となる。申立人の陳述を聴く審査庁も申立人の質問をうける処分庁もいないことになる。←この解釈でよいかどうか また今度検討してみます。(2015/11/10)


(32条3項読み替え後)
3  前二項の場合において、審査庁が、証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

※審査請求人と参加人は、証拠書類や証拠物を、処分庁等は、当該処分の理由となる事実を証する書類などを審査庁に提出できるが、その際、審査庁が定めた期間内にこれを提出しなければならない。


(33条から37条読み替え後)
33条
審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる。この場合において、審査庁は、その提出された物件を留め置くことができる。
34条
審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実の陳述を求め、又は鑑定を求めることができる。
35条
1 審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。
2  審査庁は、審査請求人又は参加人の申立てにより前項の検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を当該申立てをした者に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならない。
36条
審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。
37条
1 審査庁は、審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜しているなど事件が複雑であることその他の事情により、迅速かつ公正な審理を行うため、第三十一条から前条までに定める審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合には、期日及び場所を指定して、審理関係人を招集し、あらかじめ、これらの審理手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができる。
2  審査庁は、審理関係人が遠隔の地に居住している場合その他相当と認める場合には、政令で定めるところにより、審理員及び審理関係人が音声の送受信により通話をすることができる方法によって、前項に規定する意見の聴取を行うことができる。
3  審査庁は、前二項の規定による意見の聴取を行ったときは、遅滞なく、第三十一条から前条までに定める審理手続の期日及び場所並びに第四十一条第一項の規定による審理手続の終結の予定時期を決定し、これらを審理関係人に通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。

※33条から37条まで審理員が審査庁と読み替えられた。審理員と同様に審査庁は、「物件の提出要求」「検証」「審理手続の計画的遂行」などができることと規定された。


(38条1項2項3項と5項読み替え後)
38条
1  審査請求人又は参加人は、第四十一条第一項又は第二項の規定により審理手続が終結するまでの間、審査庁に対し、提出書類等の閲覧又は当該書面若しくは当該書類の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審査庁は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。
審査庁は、前項の規定による閲覧をさせ、又は同項の規定による交付をしようとするときは、当該閲覧又は交付に係る提出書類等の提出人の意見を聴かなければならない。ただし、審査庁が、その必要がないと認めるときは、この限りでない。
審査庁は、第一項の規定による閲覧について、日時及び場所を指定することができる。
審査庁は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、前項の手数料を減額し、又は免除することができる。

※38条各項の審理員が審査庁と読み替えられた。


(39条読み替え後)
審査庁は、必要があると認める場合には、数個の審査請求に係る審理手続を併合し、又は併合された数個の審査請求に係る審理手続を分離することができる。

※39条の審理員が審査庁と読み替えられた。


(41条1項と2項読み替え後)
1 審査庁は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。
2 前項に定めるもののほか、審査庁は、次の各号のいずれかに該当するときは、審理手続を終結することができる。
一  次のイからホまでに掲げる規定の相当の期間内に、当該イからホまでに定める物件が提出されない場合において、更に一定の期間を示して、当該物件の提出を求めたにもかかわらず、当該提出期間内に当該物件が提出されなかったとき。
イ 第二十九条第二項 弁明書
ロ 第三十条第一項後段 反論書
ハ 第三十条第二項後段 意見書
ニ 第三十二条第三項 証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件
ホ 第三十三条前段 書類その他の物件
二  申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき。

※41条1項2項の審理員が審査庁と読み替えられ、審理手続の終結は、審理員による審理と同様になった。


(41条3項読み替え後)
3 審査庁が前二項の規定により審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨を通知するものとする。

※審理員がいないので、審理員意見書などを審査庁に提出する予定時期を審理関係人に通知する必要はないので、審理関係人に審理手続を終結した旨を通知することとした。


(44条読み替え後)
審査庁は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、裁決をしなければならない。

※合議制の機関が審査庁である場合は、行政不服審査会等に諮問する必要はないので、審理手続を終結したら、遅滞なく、裁決をしなければならないこととされた。


(50条1項4号読み替え後)
1 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。
一  主文
二  事案の概要
三  審理関係人の主張の要旨
四  理由 (第一号の主文が審理員意見書又は行政不服審査会等若しくは審議会等の答申書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を含む。)

※合議制の機関が審査庁である場合は、行政不服審査会等に諮問する必要はないし、審理員意見書もないので、余計な規定を削除した。取り消し線部分。

■審理員よる審理手続の適用除外(第十七条、第四十条、第四十二条及び第五十条第二項の規定は、適用しない)

合議制の機関が審査庁である場合は、新行審法17条・40条・42条・50条2項の規定は、適用しないこととされている。審理員さんいない事で、不必要な条文を適用除外にしている。

  • 17条は、「審理員となるべき者の名簿」の規定。審理員いらないので当然に適用無し。
  • 40条は、「審理員による執行停止の意見書の提出」の規定。審理員いないので適用無し。
  • 42条は、「審理員意見書」の規定。審理員さんいないので、適用無し。
  • 50条2項は、「裁決書に審理員意見書の添付」の規定。審理員意見書ないので、適用無し。

■まとめ

行政不服審査法が改正され、審理員による審査手続や行政不服審査会等への諮問などが新設されましたが、合議制の機関が審査庁である場合は、審理員による審査手続や行政不服審査会等への諮問は行われません。合議制の機関が審査庁である場合でも、行政不服審査法改正の趣旨を反映して審査手続をする必要があります。新行審法9条3項を確認してみると新設された「口頭意見陳述時に、処分庁等への質問」や「提出書類等の写しの交付」などは、そのまま適用されますので、改正の趣旨は反映されていると思います。
平成28年4月に新行審法が施行予定ですが、これを機会に社会保険審査会や介護保険審査会などへ不服申立てをためらっていた方が、不服申立てを行って、よい方向に向かえることになればよいと考えます。

この続きは
新行政不服審査法第9条第4項を確認してみます」の記事でしています。