改正行審法の規定による審査請求の進み方と進め方

《書面審理主義》

審査請求の審理は、原則として書面によって行われます(書面審理主義)。

審査請求人は、審理員や行政不服審査会の委員に理解できるように主張を書面に記載する必要があります。

審理員は、処分に関与していない別の部の偉い人(部長とか)が指名される予定になっています。もしかしたら、審理員に指名された職員は、審査請求された処分の根拠法令について全く理解していないかもしれない。別の部が扱っている法令の内容について、知らないのが当然かもしれません。そんな審理員に理解できるように審査請求書をつくり、証拠書類を提出しなければなりません。

地方公共団体が設置する行政不服審査会の委員についても同じことが言えます。総務省に設置される行政不服審査会では、事案によって専門の知識を必要とする時には、専門委員を置いて審査会の後方支援する体制をとることができますが、地方版行政不服審査会には、そんな専門委員を置く余裕はありません。地方版審査会の委員は、疎い法令についても調査審議し、答申書を書かなければなりません。そんな委員が、容易に理解できるよう主張書面をつくり、証拠書類を提出しなければなりません。

 

《審査請求の進み方と進め方》

※改正行審法が規定するベーシックな審査請求手続となる地方税(事業所税)の更正処分の不服申立てを想定して、審査請求人の立場からの進み方と進め方です。 審査庁は市長、行政不服審査会は市が設置する行政不服審査会にしています。

① 審査請求人が、審査請求書を提出する

  • 市長宛に審査請求書を提出します。原則として、審査請求人は、更正処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に審査請求書を提出しなければなりません。
  • 必要に応じて、執行停止の申立ても行います。
    執行停止の要件である「重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき」は、審査請求人が主張立証することになります。
    また消極要件である「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」と「本案について理由がないとみえるとき」は、処分庁側が主張立証することになります。
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②市長に指名された審査請求手続を担当する審理員から、その旨の通知が届きます

  • 審査請求書が、形式的な書面審査をとおり、担当の審理員が決まると、その旨の通知が届きます。もし、審査請求書に形式的な不備があると、補正してくれと連絡がきます。
  • 審理員は、処分が、違法か不当か適切だったか判断する人です。審理員に審査請求人の主張を納得させることが一連の手続の目的となります。

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③審理員から処分担当者が作成した弁明書が送られてきます

  • 弁明書には、処分の内容と理由が記載されています。処分時には、よくわからん理由付けだったのが、弁明書には、具体的に書いてある場合もあり得ます。読み込んで対策を練りましょう。

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④弁明書に記載された事に対する反論書を書いて、審理員に提出します

  • 反論書の提出は、任意です。審査請求書に、しっかりと理由を書いているので、反論書を出さないという選択もできますが、後の行政不服審査会に提出される書類にもあたりますし、審理員に争点を理解してもらうためにも、反論書と提出した方が良いでしょう。 反論書を出すとき、一緒に反論の証拠書類や証拠物も提出しましょう。

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⑤審理員に対して処分担当者から提出された書類の写しの交付を求めます

  • 処分庁の判断の基礎となった書類です。「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」です。処分庁の証拠書類をゲットして対策を練ります。必要に応じて反論の証拠書類を提出します。

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⑥口頭意見陳述の場で、審理員に意見を述べ、処分担当者に質問する

  • 審査請求人が申立てをした場合、口頭意見陳述の場が設けられます。この場では、審理員に意見を述べることが出来ますが、逆に、審理員から質問されることにもなります。処分担当者も呼ばれています。処分担当者に面と向かって、質問することもできます。 一人で審理員、処分担当者と対峙することが不安な方は補佐人を連れていくことが出来ます。

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⑦必要があれば、審理員に参考人の話を聞かせたり、必要な場所を検証してもらいます

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⑧必要な審理手続が終わると、審理員より審査手続が終結した旨と市長に審理員意見書(市長がすべき裁決に関する意見書)を提出する予定時期の通知が来ます

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⑨審査請求人の主張が認められ処分が全部取り消される場合、市長が認容裁決をして裁決書が送られてきます

  • 審査請求人が、行政不服審査会への諮問を希望しない申し出をしている場合も、この段階で裁決書が送られてきます。

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⑩審査請求人の主張が認められていない場合、市長から行政不服審査会に諮問したことの通知がきます

  • この通知と一緒に審理員意見書の写しが送られてきますので、審理員がどのように考え、どのように判断したかが分かります。
    又、行政不服審査会に諮問されたという事は、審査請求人の主張が認められていないことを意味します。またまた対策を練る必要があります。

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⑪行政不服審査会に市長が提出した書面の交付を求めます

  • 市長は、行政不服審査会に審理員意見書の他に、口頭意見陳述や参考人の陳述の記録など審理員が審理手続中作成した書類や審理中提出された書類一式送付しています。それらの書類を手に入れ、反論の主張書面や資料を提出します。

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⑫その他必要があれば、行政不服審査会に口頭意見陳述の機会を申し立てます

  • 審理員が行う口頭意見陳述の場と違い、市長(側)は出てきません。行政不服審査会に審査請求人の主張を理解してもらい裁決を覆す最後の場かもです。

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⑬行政不服審査会から答申書の写しが送られてきます

  • 行政不服審査会は、市長に答申をしたときは、審査請求人に答申書の写しを送付して、答申の内容を公表することになっています。行政不服審査会が、どう考えたかも分かるようになっています。

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⑭市長から裁決書が送られてきます

  • 市長は、行政不服審査会から答申を受けた時は、遅滞なく、裁決をすることになっています。良くも悪くも市長からの裁決書が送られてきて審査請求は終わります。

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⑮取消訴訟を提起するか検討します

  • 納得がいかない、腹立たしい場合には、裁決があったことを知った日から6月以内に取消訴訟を提起します。
  • 地方税の場合、審査請求前置主義が維持されていますので、裁判に訴える前に審査請求のプロセスを経ておかなければなりません。

 

改正行政不服審査法の規定する基本的な不服申立ての進め方は、審査請求人の立場からみた場合、上記のようになります。しかし、個別の法律・条例に不服申立てに関する別の規定があったりしますので、上記とは違うプロセスになることがあります。実際に不服申立てをする際には、個別の法律・条例を確認する必要があります。

 

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