行政不服審査法の整備法によりちょっぴり改正される行政書士法

行政不服審査法の整備法によりちょっぴり改正される行政書士法

平成28年4月に施行される予定の行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律により、行政書士法(昭和26年法律第四号)の一部が改正されます。行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定を反映するため改正です。とりあえず確認してみました。

行政書士法の改正条文を確認

(指定試験機関がした処分等に係る審査請求)
第四条の十八
指定試験機関が行う試験事務に係る処分又はその不作為については、総務大臣に対し、審査請求をすることができる。この場合において、総務大臣は、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十五条第二項及び第三項、第四十六条第一項及び第二項、第四十七条並びに第四十九条第三項の規定の適用については、指定試験機関の上級行政庁とみなす。
※下線部分が改正部分です

指定試験機関とは、一般財団法人行政書士試験研究センターのことです。”一般財団法人行政書士試験研究センターが行う試験事務に係る処分又はその不作為については、総務大臣に対し、審査請求をすることができる”とのことです。が、そもそも行政書士試験研究センターに試験事務に係る処分又はその不作為について審査請求をするケースがあるの?どんなケース?と思いますが、置いておきましょう。
改正部分で、総務大臣が、行政書士試験研究センターの上級行政庁にみなされることになりました。総務大臣は、必要があると認める場合には、行政書士試験研究センターの意見を聴取せず、処分の執行停止をとることができます。
また、総務大臣が、審査請求の認容裁決をする場合、裁決で当該処分を取り消し、又は変更することもできる。申請を却下し、棄却する処分を取り消す場合には、総務大臣は、行政書士試験研究センターに、一定の処分をすべきことを命ずることとなりました。

 

(登録を拒否された場合等の審査請求)
第六条の三
前条第二項の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、総務大臣に対して審査請求をすることができる。
2  前条第一項の規定による登録の申請をした者は、当該申請をした日から三月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされない場合には、当該登録を拒否されたものとして、総務大臣に対して審査請求をすることができる。この場合においては、審査請求があつた日に日本行政書士会連合会が同条第二項の規定により当該登録を拒否したものとみなす。
3 前二項の場合において、総務大臣は、行政不服審査法第二十五条第二項及び第三項並びに第四十六条第二項の規定の適用については、日本行政書士会連合会の上級行政庁とみなす。
※下線部分が改正部分です

日本行政書士会連合会に「登録を拒否された場合」と「登録の申請をしたのに3月以上ほったらかしにされた場合」、総務大臣に審査請求をすることができる規定です。
改正部分で、総務大臣が、日本行政書士会連合会の上級行政庁にみなされることになりました。総務大臣は、必要があると認める場合には、日本行政書士会連合会の意見を聴取せず、処分の執行停止をとることができます。そもそも「登録を拒否された場合」に処分の執行停止を申立てるケースがあるのか?わかりませんが、行政不服審査法第二十五条第二項及び第三項の規定の適用にする際には、総務大臣が、日本行政書士会連合会の上級行政庁とみなされます。
次に、総務大臣が、登録を拒否処分を取り消す認容裁決をする場合、日本行政書士会連合会に「登録しなさい」と命ずることとなりました。総務大臣は、第四十六条第二項の規定の適用については、日本行政書士会連合会の上級行政庁とみなされるからです。

現行政書士法第6条の3 3項では、
「前二項の規定による審査請求が理由があるときは、総務大臣は、日本行政書士会連合会に対して相当の処分をすべき旨を命じなければならない。 」
と規定してあり、文言は変わっても内容は変わらないような改正だと思っています。

 

(登録の取消し)
第六条の五
日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が、偽りその他不正の手段により当該登録を受けたことが判明したときは、当該登録を取り消さなければならない。
2  日本行政書士会連合会は、前項の規定により登録を取り消したときは、その旨及びその理由を当該処分を受ける者に書面により通知しなければならない。
3  第六条の二第二項後段並びに第六条の三第一項及び第三項の規定は、第一項の規定による登録の取消しに準用する。この場合において、同条第三項中「第四十六条第二項」とあるのは、「第四十六条第一項」と読み替えるものとする。
※下線部分は改正部分というか追加部分

偽りその他不正の手段により行政書士登録を受けたことが判明したとき、登録を取り消す規定です。資格審査会の議決を経なければならないことや総務大臣に審査請求できることが規定されています。
改正部分で、総務大臣が、日本行政書士会連合会の上級行政庁にみなされることになりました。登録の取消し処分の審査請求が理由がある場合、総務大臣は、裁決で当該処分を取り消し、またはこれを変更することができると規定されました。

 

(登録の抹消)
第七条
日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消しなければならない。
一  第二条の二第二号から第五号まで、第七号又は第八号に掲げる事由のいずれかに該当するに至つたとき。
二  その業を廃止しようとする旨の届出があつたとき。
三  死亡したとき。
四  前条第一項の規定による登録の取消しの処分を受けたとき。
2  日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消することができる。
一  引き続き二年以上行政書士の業務を行わないとき。
二  心身の故障により行政書士の業務を行うことができないとき。
3  第六条の二第二項後段、第六条の三第一項及び第三項並びに前条第二項の規定は、前項の規定による登録の抹消に準用する。 この場合において、第六条の三第三項中「第四十六条第二項」とあるのは、「第四十六条第一項」と読み替えるものとする。
※下線部分は改正部分というか追加部分

まとめ

今回の行政不服審査法の整備法により改正される行政書士法は、内容を確認してみると、小改正ようです。

審査請求時、総務大臣が、一般財団法人行政書士試験研究センターや日本行政書士会連合会の上級行政庁にみなされるとのことです。整備法により改正される行政書士法は、小改正でも、新行政不服審査法は、大改正ですので、行政書士の登録に関する審査請求のやり方は変わります。総務省の審理員が審理をします。行政不服審査会への諮問はないので、審理員に主張を認めてもらう必要があります。

ところで、今まで行政書士が登録抹消の処分を受けた時、よく総務大臣に審査請求していたのでしょうか?認容裁決を受けて登録抹消の処分の取り消しを得て、再び行政書士を名乗ることができた人は、どれくらいいるのでしょうか?私には、わかりません。とりあえず、平成28年4月以降の処分からなので、お間違えなきようお願い申し上げます。

自分としては、審査請求したくないので、行政書士法第二条の二第七号に該当して登録を抹消されないよう業務をしていきます。

以上  おわり